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組織開発コンサルティングレポートVol.010「リーダーとしての視座を高める難しさ」

  • 業種 企業経営
  • 種別 レポート
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リーダーとしての視座を高める難しさ 解説

株式会社日本経営 参与 株式会社ミライバ 取締役 / 江畑 直樹

リーダー会議の中で起きた出来事

リーダー会議の中で、あるメンバーから、とある記事が共有されました。

事業の成果を確実に出すためのマネジメントのポイントが、具体的にわかりやすく示されています。集まったリーダーたちは十分に話し合い、「これを自分たちに当てはめて整理していこう、この体系を自分たちに活かしていこう」とする流れになりました。

ところが、その状況を見ていたトップは、待ったを掛けます。

ここに書いてあることは、なるほど「その通りだ」と思うことが多い。でもこれをそのまま実行して、本当にうまくいくと思うか? 本当に私たちが向き合うべきことなのか? もう一度、しっかりと見つめてほしい。

待ったをかけるトップ、その真意は?

リーダーたちはトップの真意を計りかねて、黙ってしまいました。

トップは次のように続けました。

ここには、市場で起きていることを一般化して、何をすれば成果が出せるか、とても分かりやすく書かれている。とてもシンプルだ。しかし果たして私たちの現状はそのようにシンプルなものだろうか。

  • われわれの事業が、今どの成長段階にあるのか
  • ビジョンに対する社員の共鳴度がどの程度か
  • リーダーみんなの置かれている状況と、向き合う必要のある課題とは何か
  • 部下たちは、今どのような心境にあるのか
  • 社員同士の関係の質や協働の質は何で、さらなる進化に向けて何が問われているのか

こうした事実を観ずに、あたかも「これさえすれば上手くいく」という聞こえの良いものに囚われすぎていないか? リーダーとして思考を省略しすぎていないか?

私たちが向き合う必要のあることは、私たち自身を見つめることにある。ここを観ずして、記事を鵜呑みにしてはいけない。リーダーとして正しい視点を身につけてほしい

リーダーはどう受け止めたのか

トップは「リーダーとしての視点」を問うているのだと、皆さん理解されました。ただ、それぞれ受け止め方は違っているようにも思われました。

そこで、私から次のように補足しました。

この記事が否定されているのでないことは、皆さんご理解いただけていると思います。

では、トップは何を言わんとしているのでしょうか。

今の発信を通して何に気づいたのかを、皆さんでシェアしましょう。

さすがリーダーの皆さんです。次々と意見が出されました。

確かに、今置かれている状況を深く考えずに、現実を変えようとしていた。

新たな学びは重要だと思う。ただその情報を鵜呑みにしてマネジメントすることは、偏った見方に陥ってしまう。注意しなければならないと感じた。

足元で起きている状況を捉えずに、ただ新しいものをインプットすることは、必ずしも良いことではないことを気付かされた。

自分には全くない視点だった。そんなに上手くいくのか?と考えてみると、確かに次々と疑問が湧いてくる。

そのまま取り入れたら、部下たちはマイナス感情を抱いていたかもしれない。結局、自分たちにとって都合のよいものだから、すぐ取り入れたいと思ったのかもしれない。

足元を見つめるというのは、自分たちのことを客観的に観るということなのか? どうすれば良いのか分からなくなる。

意見が出尽くすと、トップは自らの体験談を語り始めました。

「事業をすること、マネジメントをすること、人を育てていくこと」が、いかに難しいことであるか。それは単純化したり簡単に変えたりできるものではないということを、丁寧に語られたのです。

言葉にはならない「事業の本質、マネジメントの本質、人を育てていくことの本質」への想いが、リーダーの皆さんにも伝わったようです。

「事例を自分たちに当てはめていく」のではなく、「何を話し合っていく必要があるか、見つめ直していこう」という方向に、流れが大きく変わりました。

何と向き合うことが問われているのか

私が今回の事例をご紹介したのは、ここに「リーダーとしての資質はなにか」ということの学びの一つがあると思ったからです。

リーダーとしての力を習熟させていくには、下記の両面が必要になります。

  1. 物事を俯瞰して捉え、合理的・効率的に、短期間で物事を進めていくための「ノウハウやマネジメントスキル」
  2. 物事の本質や目には視えない領域を含めた「正しい洞察による状況理解」と、中長期的な視点から、チームや個々人のマインドや精神を育んでいく「視座やリーダーシップ」

今回のケースでは、後者の「視座とリーダーシップ」について、トップから注意喚起がなされたのです。

リーダーとしての学習は、ただ現場を積み重ねればできるというものではありません。

自分たちの足元をしっかりと見つめ、起きている事実を踏まえ、課題とテーマを設定した上で実施していくことが大切なポイントとなります。

「今私たちは、何と向き合うことが問われているのだろうか?」ここにいつも健全な疑問を持っていただくことが、重要なのではないでしょうか?

このレポートの解説者

江畑 直樹(えばた なおき)
株式会社日本経営 参与 株式会社ミライバ 取締役

2003年日本経営入社。主に医療機関、福祉施設の組織創りや幹部・管理職・監督職の研修に従事する。約2年間にわたる医療・福祉のグループ法人への出向を含め、これまでに100以上の医療法人、社会福祉法人の支援実績を有する。
2018年に株式会社ミライバを設立し、組織の風土改革や次世代リーダーの育成、幹部・管理職の視座の向上等をテーマとする組織開発コンサルティングや人材開発研修の支援を行う。

本稿は掲載時点の情報に基づき、一般的なコメントを述べたものです。実際の経営の判断は個別具体的に検討する必要がありますので、専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。

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